「母という呪縛 娘という牢獄」という小説を知っていますか?この物語は、実際に滋賀県で起こった事件が題材となっているノンフィクション小説です。
母親の度が過ぎた教育によって、精神的に追い詰められていく娘の姿が当時のLINEのやりとりなどをもとにリアルに描かれています。
「誰かのためではない自分にとっての幸せ」について深く考えさせられる1冊だったので、詳しく紹介していきます。
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「母という呪縛 娘という牢獄」はaudiobookでも聴けるので、活字を読むのが苦手な人は音声で楽しむのもおすすめ!
「母という呪縛 娘という牢獄」とはどんな作品?
最初に、「母という呪縛 娘という牢獄」について、基本情報やあらすじ、おすすめな人について紹介します。
「母という呪縛 娘という牢獄」|基本情報
- 著者:斎藤彩
- 出版社:講談社
- ページ数:288ページ
- 発売日:2022/12/16
- 価格:1,980円(単行本)
この本の作者の前職は、「記者」。そのときに取材をしていた事件が「母という呪縛 娘という牢獄」の題材になっています。ノンフィクションならではのリアルさが見どころの作品です。
「母という呪縛 娘という牢獄」|あらすじ
「モンスターを殺した。これで一安心だ」
深夜3時42分。母を殺した娘は、ツイッターに投稿をした。
2018年3月10日、琵琶湖の南側の野洲川南流河川敷で、両手と両足、頭部のない体幹部だけの遺体が発見される。腐敗した遺体にトンビが群がっているところを通りかかった住民がみつけたのだ。
遺体の身元は、髙崎妙子・58歳(仮名)だと判明する。河川敷から徒歩圏内の一軒家に暮らす女性だった。夫とは20年以上前に別居し、娘のあかり(仮名)と二人暮らしだった。
さらに、母と娘の関係が異様だったことも判明する。娘のあかりは、幼いときから成績優秀で中高一貫の進学校に通っていたが、母・紗子に超難関の国立医学部への進学を強要され、9年にもわたって浪人生活を送っていたのだ。
長い間二人暮らしをし、お風呂にもふたりで入るほど濃密な関係の親子に何があったのか?いき過ぎた母の愛情に苦しめられる娘に、心が痛みます。
どこの家庭でも一歩間違えれば同じことが起こってしまいそうとも思ってしまうのが、この作品の怖いところ。
「母という呪縛 娘という牢獄」|おすすめな人
「母という呪縛 娘という牢獄」をおすすめしたいのは以下のような人です。
重たいテーマや描写が大丈夫な人
ノンフィクション作品が好きな人
実際の事件の真相が知りたい人
親からの期待が苦しいと感じている人は、共感できる部分の多い作品だと思います。親に勧められた道を素直に歩んできた人も、きっと勇気がもらえます。娘のあかりと似た境遇の人は共感できる反面、本当に自分のやりたいことを探すきっかけになるかもしれません。
また、ノンフィクション作品なので、実際の親子のLINEのやりとりなどリアルな心情が描かれているのが特徴。リアルだからこそ、読み終わったあとも心に残ります。重たいテーマの小説に挑戦してみたい人にもおすすめです。
「母という呪縛 娘という牢獄」のおすすめポイント
ここからは、「母と言う呪縛 娘という牢獄」のおすすめポイントを紹介します。
より作品の中身が気になりそうな情報を集めてみました!
おすすめポイント①実話がもとになっている
「母と言う呪縛 娘という牢獄」のおすすめポイントは、実話がもとになっていること。この作品は、記者である筆者が娘のあかりと実際に面会したり手紙のやりとりをしたりして、取材を続けるなかで完成した作品です。
この作品を執筆した背景について筆者は「事件の加害者の視点を掘り下げてみたかった」と、とあるインタビューで答えています。
「どんな背景で人は加害者になるのか」「なぜ人は加害行動にいたってしまうのか」「事件を防ぐためにはどうしたらよかったのか」を直接聞いてみたかったという筆者の思いが作品にいたるところにあらわれています。
このリアルさが他人事とは捉えられず、かなり考えさせられる1冊です。
「母という呪縛 娘という牢獄」の事件の元ネタは?
このYouTube動画で元ネタになった事件について詳しく紹介されています。事件について詳しく知りたい人は、みてみてください。
おすすめポイント②ノンフィクションならではのリアルさ
この先はネタバレ要素を含みます。ネタバレしたくない人は、とばしてください!
>>感想までスキップ
「母と言う呪縛 娘という牢獄」のおすすめポイントには、ノンフィクションならではのリアルさもあります。物語には、母と娘の実際のLINEのやりとりがいくつも取り入れられているのが特徴です。そのやりとりから、母の度の過ぎた厳しさがわかります。
以下は、手術看護師になりたい娘が母に助産師になるよう強要され、助産学校を受験するも不合格だった場面でのLINEのやりとりです。
娘:入学前から漠然と手術看護師になりたいと思っていて、いざ内定をもらい希望が実現になろうとしてきて、助産師になる気持ちが薄れてしまったのはあると思います。
母:で?
娘:助産学校の合格通知と助産師免許が渡せるように頑張らないといけないなと思っています。
母:私がアンタが自分の我を通して満足しているか今の率直なとこを聞きたいの!
娘:満足はしていません。不合格であったことを申し訳なく思っています。
母:あんたが身勝手な我を押し通す度に私は苦しむことになる!それでもあんたは我を通す!そして関係がぐちゃぐちゃになる!分かってないのか?
娘:分かっています。なので、今度こそ水準に達するほどの努力をしなくてはいけないなと思っています。
母:あんたが我を通して私はまた不幸のどん底に叩き落とされた!我を通して不幸になる!まだ分からないのか?あんたの“分かってる”って何?相手に分かったと言葉だけで安心させ安心させ結局は裏切る…努力をサボる時間稼ぎじゃん
※本文より引用
娘を強く責め立てる母親の言動がリアルに描かれている場面。このように自分の夢や希望をずっと母親に否定され続けてきたのだと思うと、加害者である娘への見方が変わります。
おすすめポイント③最後の一文が泣ける
「母という呪縛 娘という牢獄」の最後の一文に、娘の素直さとゆえの切なさが描かれています。
刑期を終えたら、世話になった父や、弁護士の先生や、高校の先生にお礼の気持ちを伝えたい。
そのときはお酒も少し、飲んでみたい。
それがいまの、ささやかなのぞみだ。
※本文より引用
刑期を終えたら父や高校時代の恩師など、気を許せる人たちのなかで自由に生きてほしいなと考えさせられる一文。
自分で進路を決め、晩酌をしたり好きなドラマを観たりといった自由で平凡な日常がいかに幸せかを改めて気付かされます。
まとめ|感想・レビュー
子どもが望む進路と親がこうなって欲しいと思う姿が異なることって、どこの家庭にもであることだと思います。
「自分と同じ失敗をしてほしくない」「子どもにはいい人生を送ってほしい」だからこそ、親は愛情として口出しをしてしまう。
しかし、この作品では、「国公立医学部に入って医者になること」が正しいと思い込んだ母親による“支配”が始まります。スマホを没収された環境で毎日何時間のも勉強を強要され、成績が悪ければ繰り返される体罰。
友達と遊ぶ時間、ドラマや映画を観る時間、お金を貯めて欲しいものを買う時間。こういった人としての幸せを親からの「教育虐待」によって奪われてしまった娘。
そこには、親として娘を思う愛情ではなく、自分が叶えられなかった人生を娘に“託す”というふうにしか思えませんでした。
誰かのためではない自分にとっての“幸せとは何か”を考えさせられる1冊です。
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