2022年に映画化した「流浪の月」という作品を知っていますか?
世間から見たら「誘拐犯」と「被害者」の関係の2人の真実に迫る物語。当事者の立場で見ると、「本当の正しさとは」何なのか、深く考えさせれる1冊です。
そこで今回は、「流浪の月」のあらすじを起承転結に分けて詳しく紹介します。2020年に本屋大賞を受賞した話題作でもあるので、興味のある人はぜひ最後まで読んでみてください。
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凪良ゆう「流浪の月」のあらすじを起承転結で解説
最初に、「流浪の月」のあらすじを起承転結に分けて紹介します。
起:2人の出会い
父親が亡くなり、母親も恋人と出て行き、ひとりになった少女・更紗。叔母の家で過ごしますが、彼女にとって居心地の悪い環境でした。
叔母の家に帰りたくない更紗は、毎日遅くまで公園で過ごすようになります。いつものように公園でひとり、本を読んでいると大雨が降ってきました。それでも帰ろうとせず、読書し続ける更紗に傘をさしてくれる人物が現れます。
それは、19歳の大学生・佐伯文でした。そのあと、更紗は文の家に付いて行くことになります。
文の家は、更紗にとって「自分らしくいられる場所」でした。「帰りたくなったら、いつでも帰ってもいい」という文。しかし、更紗は文の家を離れることなく、2人での共同生活が始まりました。
2ヶ月ほど経ったある日、更紗が行方不明になったとテレビで報道されるようになります。
そんな中、2人は動物園に訪れます。そして、周囲に見つかった2人。文は誘拐犯として逮捕され、更紗は児童養護施設へと送られるのです。
承:15年後に再会
更紗と文が離れ離れになって、15年が経ちました。更紗は25歳になり、バイトをして生活をしています。
ある日、更紗はバイト先の同僚・安西佳菜子とカフェ「calico」に訪れます。
すると、「calico」で働く文の姿がありました。文の容姿は、15年前と全く変わっていませんでした。
文の存在を知った更紗は、カフェに通うようになります。しかし、文は更紗に話しかけることはありません。
いつものようにカフェに訪れていた更紗は、文に彼女がいると知ります。文が幸せに生活していると知り、更紗は安堵するのです。
そんな更紗の様子を見た更紗の恋人・中瀬亮は、彼女の後をつけたり暴力を振るったりするようになります。そして亮は、文の過去をSNSで晒すのです。
亮をひどく責め立てる更紗。言い合いになり、亮が更紗を殴って頭に怪我を負わせます。
亮の元を逃げ出した更紗は、文のカフェへと向います。これまでのことを謝る更紗に、文は「生きていたからまた会えた」と伝えました。
転:「誘拐犯」と「可哀想な被害者」のレッテル
文に保護された更紗は、同じマンションの隣の部屋に引っ越します。
新しい生活がようやく落ち着いてきたころ、更紗は安西に「恋人と旅行の間、子どもを預かってほしい」と頼まれます。
更紗は安西の娘・梨花を預かりますが、約束の日を過ぎても安西は帰ってきません。そんななか、梨花が熱を出してしまいます。仕事で梨花の面倒を見れない更紗の代わりに、文が看病をすることに。
そんな中、文と梨花の姿を捉えた画像と更紗との過去の事件を扱う記事が週刊誌に掲載されます。
亮の仕業と疑った更紗は、彼を問い詰めます。しかし、彼は否定。「ロリコンを気持ち悪いと思う人間は腐るほどいる」と言い放った亮は、更紗の前で自殺をはかりました。
結:2人の愛のカタチ
梨花は保護され文は出頭しますが、事件性はないとして釈放されます。
週刊誌をみた文の彼女は、「自分と大人の関係を持たなかったのは、小児性愛者だからなのか」と問います。文は、小さくうなずくのでした。
更紗は、ここまで生きてこられたのは文のおかげだと感謝を伝えます。
すると、文は震えながら服を脱いで、「体が大人にならない病気を抱えている」という秘密を打ち明けます。そんな文を更紗は強く抱きしめ、2人で生きていくと決意するのです。
長崎県の田舎へと引っ越した2人は、カフェを開きます。そして、梨花と再会を果たすのでした。
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「流浪の月が気持ち悪い」といわれる理由とは?
「流浪の月」には、「気持ち悪い」という口コミも見られます。気持ち悪いと言われる背景に、「ロリコンを正当化している」という意見がありました。
しかし、物語の最後で文は小児性愛者ではなかったと明かされています。また、文が彼女や大人になった更紗と大人の関係を持たなかったのは、病気のせいです。
「少女と一緒にいる=ロリコン」という私たちの固定観念から、気持ち悪いといわれてしまっているのかもしれません。
【考察】「流浪の月」の3つのキーポイント
ここからは、「流浪の月」を読むときに注目したい3つのポイントについて紹介します。
「流浪の月」のキーポイント①ケチャップをぬぐう意味
更紗が小さいころ、文の家で食事をする際に口の周りをケチャップだらけにするシーンがあります。
なかなかケチャップを拭き取れない更紗に、文は手でケチャップを拭ってあげます。そんな文に対して、更紗は「お父さんみたい」といいます。
このとき、「大人の女性を好きになれない自分は小児性愛者なのではないか」と文は疑っていました。しかし、更紗の口元に触れて恋ではないとわかります。
また、体が成長しないことにも悩みを抱えていた文。更紗に父親みたいといわれたことで、大人として認められた気分になります。
恋愛感情ではなく、お互いが本当に必要な存在であることが描かれている場面です。
「流浪の月」のキーポイント②文と更紗の本当の関係
世間には、「犯罪者」と「被害者」として見られている2人。しかし実際は、お互いの理解者として信頼関係を築き上げていました。
家族から突き放され、大人の女性との恋愛を諦めた文。幼少期に叔母の息子から性犯罪を受けたことがきっかけで、大人の関係を持つことを躊躇してしまう更紗。
お互いがそれぞれのありのままを受け入れられる存在なのです。
「流浪の月」のキーポイント③文の病気と下半身を出した意味【ネタバレあり】
文の「大人にならない病気」について、病名は明らかにされていません。文は声変わりや生殖器の発達などの第二次成長がないことから、男性ホルモンの欠乏を原因とする病気だと予想できます。
更紗や世間は、文を小児性愛者だと思い込んでいました。しかし実際は子ども好んでいたのではなく、病気のせいで大人と恋愛をするのが困難だったのです。
文の秘密を知った更紗は受け止め、2人で支え合って生きていくと決意する印象的な場面です。
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タイトル「流浪の月」に隠された意味
「流浪の月」というタイトルには、2人の関係を表れているのがポイントです。「流浪」と「月」には、以下のような特徴があります。
「流浪」には、まさに人目を避けて2人で各地を転々と周るラストのシーンを意味していると予測できます。
また、世間は更紗や文の一部分だけを見て、批判していました。それは、地球(世間)から一部分しか見えない月のようです。
つまり、「地球(世間)からすべてが見えない、遠くをさまよう月(更紗と文)」を描いているのだと、タイトルから考察できます。
映画化した「流浪の月」のキャストは誰?
「流浪の月」は、2022年に映画化している作品です。キャストは、以下の通り。
- 広瀬すず:家内更紗役
- 松坂桃李:佐伯文役
- 横浜流星:中瀬亮役
- 趣里:安西佳菜子役
映画で見ると、物語のイメージがつきやすいかもしれません。また映画を観てから、原作を読むと理解しやすかったり比較できたりしてより楽しめます。
\映画「流浪の月」を視聴する/
「流浪の月」の作者凪良ゆうはどのような人物?
「流浪の月」の作者は、凪良ゆうです。滋賀県出身の小説家で、BL(ボーイズラブ)作品から一般文芸まで幅広い作品を手がけています。
小説を執筆するときは登場人物になりきって書くようで、リアリティーのある作品が多いのが特徴です。
- 「神様のビオトープ」2017年
- 「すみれ荘ファミリア」2021年
- 「わたしの美しい庭」2021年
- 「汝、星のごとく」2022年
- 「滅びの前のシャングリラ」2024年
作品名をタップすると、あらすじや詳細情報が見られます!
「流浪の月」をおすすめしたい人
- 自分の居場所がないと感じている人
- 登場人物の感情がリアルに描かれている作品が好きな人
- 「世間から外れた存在」に焦点が当たる作品を読みたい人
「流浪の月」を読んでみて感じるのが、「更紗と文の2人の心情」と「世間の声」とのギャップ。
日頃ニュースなどを見てると世間側の立場になってしまいがちですが、当事者の心情を知るとまた違った見え方ができます。
「本当の正しさとは」について問われる1冊です。
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まとめ|「流浪の月」を読んで
今回は、流浪の月のあらすじを起承転結で詳しく紹介しました。更紗と文は、世間から許されない関係。しかし、お互いを尊重し理解し合う2人の関係を見ていると、「本当の正しさとは何なのか」考えさせられる作品です。
本屋大賞を受賞したり映画化したりと、話題作なので興味のある人はぜひ手に取ってみてください。
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